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定借の家は損?得?

太郎です。

先日、学生時代の友人に久しぶりに会って飲みました。その時の会話です。

「へえ、そういう勤め先なんだ。定借推進機構ねえ。ところで定借って得なの?」

「乱暴な質問だなあ。“得”ってなんだよ?人それぞれ思うところが違うだろ?」

「じゃあ、お金、お金でいいよ。定借の家は土地を購入しないから購入価格は土地付きの家より安いよな。でも地代を払い続けなければならないし、契約の期間が終わったら出て行かなければならないんだろう?土地付きの家ならずっと住めるし、売却すれば金に替えることも可能。お前には悪いが俺に定借は必要なさそうだ。」

「“物事は多面的に見ないといけない”と言われる時の悪い例の典型みたいだな、お前は。じゃあそれぞれの形態の住宅にかかるお金を比較してみよう。」

土地付戸建と定借戸建お金の比較

「このケースだと土地付き戸建てを購入する方が50年後に『土地売却で手にした金額マイナス約1,300万円』を定借住宅より多くお金を残せそうだということになる。」

「うん。ということはだな、購入したとき2,000万円だから元の値段で売れたら700万円土地付きのほうが得ってことだ!」

「実際には仲介手数料だって税金だって諸費用としてみておかなければならないかもよ。」

「あ、そっか。それに購入した金額で売れるかどうかなんてわからんしな…」

「その通り。結局長い時間の中でお金というのはそんなに単純なものではなく、長期になればなるほど読みきれないことだらけ。そういう(長期で見た)とき、定借の利点は圧倒的に出て行くお金の額が小さいだけに、いろんな経済的事情への対応がし易いことがある。総額を大きく支払う土地付きは机上論では確かに残せるが途中での融通は利きにくい。機構のある理事さんが言ってたけど『定借住宅を選択し、土地を購入して支払うはずだったお金(返済額)を積み立てて運用したら二、三十年後にはすごい金融資産が作れるよ』って。つまりはちゃんと考えて実践すれば、いい家に住んで、返済も楽で、大きく貯蓄も可能ってことだ。」

「え?土地買うほうが貯金減るの?」

「いやいや、そんなことまったく言ってないぞ!実際50年が経ったところで、どっちが得か損かなんて誰にもわからんということ。自分の暮らし方、それからお金に対する考え方で選択していかなければならないってことだよ。」

「もっと具体的に説明してくれよ。」

「例えば子育て期間(若年家庭)にゆとりの住まいを持って子供たちの思い出を豊かにしてあげたいと考えたり、もしくは教育や習い事にしっかりとお金をかけてあげたいと思えば、定借はバッチリだ。買い易い上に水準に妥協がないからな。お金がたくさんかかって生活水準が上がらなくても資産として土地を子供に残したいと望むなら所有権だな。あ、別に子供だけじゃないよ。夫婦2人でも定借なら毎年海外旅行とか行こうなんて計画のできるし。とにかくどちらがいいとかじゃないけど、定借にはお金についてすこし自由度の高い暮らしの実現が可能と言えるかもな。」

「なるほど~お前すごいな~。説得力あるわ。」

「おいおい、勘違いするなよ。自由度が高いっていうのはちゃんと管理しなきゃダメってことでもあるわけだからな。ところで今度は俺から質問していいか?」

「お、なんでも答えてやるぜ、お前よりもスッキリと。」

「いちいち一言多いやついだな。じゃ聞くぞ、なんで家が欲しいんだ?何のために家を選ぶんだ?」

「ん?なんだそりゃ?馬鹿にしたらいかんですよ。そんなの家族のために決まってるじゃないか。広いリビング、明るいキッチン、子供部屋に、親兄弟が泊まりに来れる部屋。庭のテラスでビールをくいーっとだな。ぜーんぶ家族が笑って暮らせるようにだよ。」

「へえーそうか。お前も立派に大黒柱やってるんだねえ。じゃあさ、なんでさっきから金の話で得とか損とかばかり言ってるんだよ?」

「う。。。それはだな。。。やっぱり家は資産じゃないか。」

「否定はしないけど、家選びの優先順位がまだブレブレだな。でも日本人のほとんどがそうなんだと思うよ。だって本当に住宅は高いもんな。購入検討の段階で段々みんな理想の暮らしや家族の幸せが動機だったことを忘れて損とか得とか長い先で誰にもわからないお金の話に縛られてしまうんだよ。知らないかもしれないけれどいま世の中にある定借住宅ってすごいんだぞ。土地付きならまずサラリーマンじゃ難しいよな~って諦めてしまうようなすごい家が実現しているんだよ。だからお金で比較なんてあってないような話なんだな実は。貴方、土地を得て自分の夢無くしていませんか、なんてな。ははは…。」

「うーむ、意地悪なやつめ。へいへいわかりやしたよ。よし、じゃあ、次は俺が意地悪な質問するぜ。」

「昔からいつも意地悪だっただろ、お前は。」

「そう言うなよ。でもこれは悪いが定期借地権推進どころの話じゃないぐらい、もしかしたらお前にはトドメの一撃になるかもしれないからこころして聞けよ。このオレに論破されたからって恥じゃないからな。ではいくぞ。オホンッ、50年経ったときに、もし生きてたら住むところなくなって困るだろ!」

「何言い出すかと思えば…。もちろんさっきも言ったけど人生の管理や計画は必要なんだよ。50年以上ボーッと何もしないで期間満了日を向かえれば、確かに困るかもな。でもな、よく考えてみろよ。50年後が知らないうちに来るわけじゃない。35年後、40年後、45年後と節目節目で考えていけばいいんだよ。実際に考えてるのは子供や孫かもしれないけどな。高齢者住宅や病院施設はその時どうなっている?そんなこと誰にもわからないんだ。それに土地を持っていたからって税金はかかるわけだし、家だって相当な修繕を必要とするだろう。所有しているから一銭もかからないと思ったら大間違いだぞ。」

「ふんふん、うーん、なるほどな。わかった。えーっと、じゃあ俺は定借にするわ!」

「えーーーーーっ。5分かからずに言ってることが180°変わったぞ。」

「いいんだよ。俺は土地を残すことなんかに執着しないクールな男なんだよ。なんかお前の話聞いてると『定借に住んでるやつのほうが賢くて男前なんじゃないか!?』って思えてきたんだよ。それにお前推進してるんだろ。俺のような思慮深い男が理解者になって嬉しいだろ。喜べ喜べ。」

「うそつけ。定借に住んだら奥さんに小遣い減らされないで済むかもって思っただろ?」

「あー、お前、勘まで良くなったな。」

お酒の席の話ですが、いま定期借地権についてまだまだ知られていないことや誤解がギュッと詰まった会話だったかなと思います。決して土地付住宅がいけないという内容ではございませんので誤解いただかないようにお願いを申し上げます。